女ウルトラマン先生 第8話 ◇無鉄砲少女がやってきた◇
1
「みんな、おはよぅ!さて、今日からみんなと一緒に勉強する事になった新しいお友達を紹介!・・・するはずだったんだけど、
実はその子、まだ来てないのよねぇ・・・。」
「なんすかそりゃ!?初登校早々遅刻だなんて、どっかの誰かさんみたいだね、先生!」
「それって私の事!?」
その時、廊下をバタバタとかけてくる足音が。教室のドアが開くと、息せきかけて1人の少女が現われた。
「お、遅れてごめんなさぁ〜い!寝坊した上に学校間違えて、その上教室まで間違えちゃいましたぁ〜〜〜!!」
どっと沸く教室内。少女は頭を掻きながら涼子の元へやってくる。
「みんな静かにして!ええと、彼女の名前は・・・。」
その時少女は、バンと教壇の上に飛び乗り、大声で叫んだ。
「私、式神春穂(しきがみはるほ)です!みなさん、よろしくお願いしますッッ!」
バシっとVサインを決める春穂。その時バランスを崩し、教壇の上からすってんころりん。白パンツ丸出しでずっこける。
「は、春穂ちゃん大丈夫!?」
「ブアッハッハッハ!ますます涼子先生そっくりだ!」
適当にカットした感のあるショートヘアーに、クリクリとした大きな瞳、ソバカスやらニキビやらで、見た目幼い印象を受ける春穂。
だが明るく元気な性格は皆に受け入れられ、初日から人気者となった。
そんな彼女は放課後、1人学校の校庭脇に植えられた大木を見上げる。
両手にツバを吐きかけると、スルスルと大木によじ登る。山奥の学校から転校してきた彼女の特技は木登りだった。
枝に寝そべり、お昼寝としゃれこもうとした春穂。
その時校舎裏で、数名の女子生徒達が1人の生徒を取り囲み、何やら怒鳴っているのを発見する。
「あれは・・・弱いモノいじめだな!」
枝から飛び降りた春穂は、足の痺れを我慢して現場へと駆け出していった。
「オイテメー、よくもアタシらの事をセンコーにチクってくれたな?ヤキ入れてやるから顔かしな!」
レトロタイプのスケ番風情が、怯える少女の腕を引っ掴む。そこへ、颯爽と春穂が駆けつけた。
「ちょっとあなた達!よってたかって1人の子を虐めるなんて卑怯だよ!」
「なんだテメェは?」
「1年E組、式神春穂!悪い奴らは許さない!」
春穂は勇猛果敢にスケ番グループに突っかかっていった。
涼子は体育器具室の点検に向かった。そこに、1人の少女がぶっ倒れているのを発見する。
グルグル目を回し、頭の上をひよこが飛び回っているという漫画チックな様子でのびているその姿に、涼子は愕然とした。
「は・・・春穂ちゃん!?」
慌てて春穂を抱きかかえる涼子。春穂は何やら白い布を口に押し込まれている。
引っ張り出してみた所、それは“ハルホ”と名前の書かれた彼女のパンツであった。
おそるおそる彼女のスカートの中に手をいれると、やはり彼女はノーパンだった。
「転校早々何やってんのこの子は!?」
2
保健室のベッドに寝かされた春穂が、ゆっくりと目を覚ます。
「むにゃむにゃ・・・・。う・・う〜ん、アレ?ここは?」
キョロキョロと辺りを見回す春穂。傍らには、涼子の姿があった。
「春穂ちゃん、あなた一体何してたの!?」
「せ、先生。えぇと確か、悪い連中が弱いモノいじめをしてたから、そいつらをやっつけようとしたんだよね。そしたら、ボカンって殴られて、
それから・・・どうなったんだっけ?」
「あなた、体育器具室ですっころがってたのよ。その子達にやっつけられたのね。その上あなた、下着を口に押し込まれてたのよ。」
「えええええ!?」
さすがの春穂も驚愕した。
「じゃ、あたしあの連中に負けちゃったの!?くやしぃ〜〜〜〜〜〜!!」
「ま、負けたとかそういう問題じゃなくてね、とにかくあなたは女の子なんだから、そういうの見かけたら突っかかったりしちゃダメよ。
相手が女子生徒だから良かったものの、もしも男子生徒だったりしたら・・・・。ブルブル」
「男だろーと女だろーと関係ないじゃん!なんで男子の生徒相手だといけないの?」
「そ、それはね、だから中学生ぐらいの男の子っていうのは女の子の身体に興味があるもんだし、あなたみたいな可愛らしくてそれでいて
ちょっと抜けてる感じの子がノコノコと突っかかってきて、そしてあなたが叩きのめされて失神したら、ほらソノ、変な悪戯しちゃうかも知れないし、
なんていうか人間には思春期っていうものがあって、植物に例えるとオシベとメシベが・・・。」
「言ってる事がよくわかんないよ先生。とにかくさあ、あたしはあいつらが許せないって思ったからやっつけようとしたんだよ。
それが逆にやられちゃうなんて・・・。クヤシイ!クヤシすぎ!今度あったらとっちめてやるんだから!」
「そんな事考えちゃダメ!いい?もしもまたそういう現場に遭遇したら、先生を呼ぶのよ。後先考えずにつっかかったら身が持たないわ。」
「だってさあ・・・。わたし、悪いヤツラがあばれてるのみると、カーっとなっちゃうんだ。黙って見てらんないんだよ・・・。」
「は、春穂ちゃん・・・。」
思わず言葉を失う涼子。無鉄砲に飛び出すのは思慮が浅すぎるが、悪い者を許せないと思う気持ちは大切だ。
涼子には彼女の気持ちが充分すぎるほど理解できた。なかなか彼女を諭す言葉が見つからない。
「ええと、だから春穂ちゃん・・・。」
「ああ!先生、今何時!?」
「ええと、もうすぐ5時になるけど・・・。」
「た、大変だ!急いでウチに帰んないと!『マスクライダー・ビーナス』見逃しちゃう!」
「ま、ますくらいだあ?」
「やだ、先生知らないの?夕方やってるテレビだよ。オートバイに乗った女戦士が、悪いヤツラやっつけるんだ。ムチャクチャかっこよくてさー。
あたしの憧れの人なんだよね。それともう一人憧れの人が、女ウルトラ戦士ユリアン!ユリアン、ちょー最高!」
「そ、そうなんだ。そうだよねぇ。ユリアンって格好いいよねえ。」
思わずニンマリする涼子。
「でしょ?ユリアンってさあ、最初メチャクチャにやられて、それでいていつの間にか勝っちゃうんだよね。ヤッパリ正義は勝つんだよね。
あたしもユリアンみたく正義のために闘って、大ピンチになって、唐突に大逆転して勝利するっていう、スーパーヒロインになりたいなあ・・・。」
まくしたてる春穂に複雑な表情をする涼子。
「とにかくそういうワケだから、早く帰んなきゃ。せんせ、サイナラ!」
「ま、待ちなさい春穂ちゃん!コレ、コレ!」
涼子はギュっと握っていた春穂のパンツを渡す。慌ててパンツを履く春穂。
「なんか生あたたか〜い・・・。先生、ずっと握ってたんだね。エッチ!」
「エッチとは何よ!洗ってかわかしてたんでしょうが!」
「ま、いーや。先生じゃーねー!!」
ドタドタと走り去っていく春穂の後姿を眺めつつ、頭を掻いて溜息をつく涼子。
3
彼女に何と言って良いものやら。涼子はたまらず矢的に相談を持ちかける。それを聞いた矢的は慌てた調子で言い始めた。
「そ、それは心配ですねぇ。自分の力を過信して、むやみやたらに突っかかっていくというのは、実に問題だ。
そういう子をフォローする人間は大変なんですよね。いやあ心配だ。こりゃ早めにあいつにひとこと言っておかないと、
何か大きな問題が起こってしまうかもしれませんね。いやあ心配だ。僕、これからあいつの家に行って来ますよ。」
「じゃ、じゃあ先生、私も行きます。」
矢的の慌てっぷりが気になる涼子。まるで、いつもそういう感じの人間をフォローしているかのような口ぶりだった。
スタスタと走る春穂。間の悪い事に、あのスケ番連中に遭遇し、ゴツンとぶつかってしまう。
「ぃってえなテメェ!なんだ、さっきのガキんちょじゃねぇか。ちょっと来やがれ!」
委細構わず走り去ろうとする春穂の襟首を捕まえ、もちあげるスケ番。
「逃げようったってそうはいかねぇ!」
「逃げるんじゃないよ!今いそがしいから、あんた達の相手はまた今度してあげるよ!」
「グダグダ言ってんじゃねえこのサル!」
「サ、サルゥ!?ムッキィィィ!やったろうじゃん!」
人気の無い川原に連れてこられた春穂。とっとと連中を片付けて、ライダービーナスを見ようと息巻くが、相手にならなかった。
取り押さえられた春穂を薄っぺらいカバンでタコ殴りにし、エナメルの靴で蹴り飛ばす。
「うぎゃッ!いつつつ・・・。ま、負けるもんかあ!」
スケ番の腕を掴んだ春穂は、思いっきり噛み付いてやった。
「いでで!このクソチビ!」
スケ番の膝蹴りが春穂の腹に突き刺さる。ぐえ、とうずくまる春穂の後頭部に、拾った木の枝をボカっと叩き込んだ。
「はぐぁぁッ!」
ぶっ倒れた春穂をガシガシと踏んづけるスケ番軍団。春穂の新品の制服が、泥にまみれていく。
「ふんぎゃああ!い、痛いい!はひぃッッ!あきょッ、んはぁぁぁッッ!」
「参ったかコノヤロウ!」
「ぅぅぅ・・・。ま、まだまだぁ!」
ベソを掻きつつも、春穂はまだ抵抗しようとする。ムクっと立ち上がり駄々ッ子パンチをブチかます。だが多勢に無勢。腕をとられ、ボキっと捻りあげられる。
「はぎゃああ!!い、痛い・・・・。う、腕が痛いよぉ・・・・・。」
ビービー泣き喚く春穂の足を掴むと、身体を逆さ吊りの状態にして両足をグゴキっとひねる。
「びあああああああッッッ!!」
さらにトドメとばかりに、高々と抱え上げられた春穂の身体がズシンと大地に叩き付けられる。ピクピクと痙攣する春穂。
ざまあみろとばかりに立ち去ろうとするスケ番グループの足を、ムギュっと引っ掴む春穂。
「ゆ・・・ゆるさないよ・・・。悪い奴は、許さないんだから・・・・。」
「なんてシツコイ奴だ!おい、コイツを締め上げちまうんだ!」
春穂の家を訪ねる涼子と矢的であったが、誰もいない。
「春穂ちゃん、どうしちゃったんだろう・・・。あんなにテレビ見たがってたはずなのに・・・・。」
「どこをほっつき歩いてるんだ式神の奴・・・。ちょっとこの辺りを捜してみましょう。」
4
「下ろして!下ろしてよぉぉ!ライダービーナスが始まっちゃうよぅ!」
「何がライダービーナスだこのクソガキ!」
春穂は全裸にひん剥かれ、両手両足を縛られ木に逆さ吊りにさせられていた。
「今後、ウチらに逆らわないと誓え!」
「ぶぇ〜〜〜〜〜だ!そんなもん誓わないもんねぇ〜〜〜!」
ベロベロバーと舌を出す春穂。スケ番達は、カバンや木の棒で春穂をタコ殴りにする。
「はぐぁ!いだぁい!あぎゃあ!ぎひぁ!はんぎゃああ!」
容赦なく春穂を痛めつけるスケ番たち。若くみずみずしい春穂の肢体が、みるみる傷つけられていく。春穂はひたすら耐えしのぐ。
「あばば・・・だ、誰か助けてぇぇ!ぷぎゃっ!ひんぐあああ!!」
その時、川原に大地震が巻き起こる。その大きさにスケ番たちは立っていられずずっこける。
春穂の身体が振り子のようにグォングォンと大きく振られるほどの地震。大地を割って、怪獣が姿を現した。
「かかかか、怪獣だああ!」
スケ番たちは叫びつつ、一目散に逃げていく。
「ま、待ってよう!1人じゃ下りらんないよぉぉぉぉ!」
泣き喚く春穂に、ノシノシと怪獣が近づいてくる。サっと飛び出し、春穂を救ったのは涼子だった。2人してくぼみに飛び込むと、
ちょうどその真上を怪獣が通過していった。
「ふぅぅ・・・・。危機一髪だったわ・・・。」
「せ、先生・・・。ありがとう先生!大好き!チュッ!」
涼子の頬に何度も接吻する春穂。
「わ、わかったから早くココから逃げなさい!矢的先生!矢的先生!」
「涼子先生、大丈夫ですか!?」
「先生、早くこの子を連れて安全な所へ!」
「わかりました。式神、早く逃げるぞ!・・・と、その前に早く服を着ろ!」
「ああああ!矢的先生、あたしの裸みたわね!エッチ!変態!大っきらいだぁ!」
「と、とにかくとっとと服を着て逃げなさい!」
投げ捨てられていた制服をうんしょと着込んだ春穂の手を引き、矢的は怪獣から逃げ出す。安全な場所まで来ると、怪獣を見上げた。
「・・・あれは、怪獣ギギドラス・・・。手強い相手だぞ・・・。ユリアンは勝てるのか・・・?」
怪獣ギギドラスは、黄金っぽい皮膚に、3つの首を持つ大怪獣である。口から引力光線っぽいものをはく、某キン○ギドラのバッタモンっぽい怪獣であった。
光線で街を破壊していくギギドラス。涼子はババっとブライトブレスレットを構えた。
「ユリアァァン!!」
颯爽と登場するユリアン。これ以上の進軍をとめるべく、ギギドラスに組み付いた。
「キャーーーーーーッッ!ユリアンだわ!先生、ユリアンよ!素敵ぃ、頑張ってぇーーーーーー!!」
生まれてはじめて本物のユリアンを見た春穂は興奮し、狂ったように叫ぶ。春穂の声援を受け、雄々しく怪獣に立ち向かうユリアン。
ギギドラスの引力光線をサっとかわし、パンチ、チョップを叩き込み、そして首を締め上げた。だが、ギギドラスの首は一つではない。
2つの首が、ユリアンの身体にガブリと噛み付く。
「ヴェアア!!」
ギギドラスの首を振り払うユリアン。サっと距離を置くが、ギギドラスの3つの口から一気に引力光線が発射された。
「ヴグアアアアアアアアアアッッッッ!!!」
光線を浴びたユリアンの身体は、漫画チックに骸骨が浮かび上がる。光線から解放されたユリアンの身体からはプスプスと煙が立ち昇る。
これ以上光線を浴びてはたまらないと、ジャンプしてギギドラスの背後に回りこむユリアン。
すると今度は2本の尻尾がユリアンを攻めはじめる。ムチのように尻尾をしならせ、ユリアンの身体に叩き込むギギドラス。
「ヴェア!ハ、ハァァ!!ヴグ、ヌグワアア!!!」
ビュンビュンと音を立て、ユリアン向けて打ちふるわれる尻尾ムチ。胸や太ももにアザが浮かび、やがて切り傷までも刻み込まれていく。
激痛のあまりうずくまるユリアンの腕に、ギギドラス左右の首が近づき、ガブリと噛み付く。
「ヴェアアアアアアアアアアア!!」
両腕に鋭い牙が食い込み、グイっと左右に引っ張り上げられる。残った首は、超至近距離からユリアンに引力光線を撃ちこんだ。
「ヴェアア!ハ、アアア!グフアアア!!ヴェアア、ンヴアアアア!ヴフゥアアアアアアア!!」
グッタリとするユリアンにスルスルと首が近づき、股間にガブリと噛み付いた。
「ヴグアアアアアアアアアアアアア!!!」
絶叫するユリアン。両腕が使えない今、忌まわしい牙から逃れる術は無い。腰をくゆらせても振り払う事など出来ない。
鋭い牙は、ますますユリアンの牙にめり込んでくる。
5
「ヴェア!ハ・・・ア、アァァ・・・。ヌグゥアア・・・・。ヴ、フゥゥ、ア・・・・。」
ガックリと膝をつくユリアン。瞳の輝きは、今にも消え去ろうとしている。
「びええええええ!!ユ、ユリアンが死んじゃうよおおおお!びええええええええ!!!」
「お、落ち着け式神!なんとか、なんとかならないものか・・・。」
すぐにでもユリアンの元に駆けつけ、助け出したい矢的であったが、春穂がそばにいては思うようにいかない。もどかしさを感じる矢的。
もはや風前の灯火となったユリアンの命。その時、UGMのスカイハイヤーとシルバーガルが飛来する。
「ハラダ、タジマ!怪獣の気をひきつけるんだ!」
「了解!」
オオヤマキャップの指示に従い、ギギドラスの周囲を旋回しつつレーザーを発射する2機。その鬱陶しさに、ギギドラスはユリアンの腕を外し、
2機に対して引力光線を発射する。両手の自由を取り戻したユリアンは、股間に噛み付くギギドラスの首をグっと掴み、引き離そうとする。
だがギギドラスの噛力は生半可なモノではなく、その牙は今にもユリアンの尾てい骨にまで到達しようとしていた。
この牙を無理矢理引き剥がそうものなら、自らの局部が激しく傷付いてしまうであろう。
だがユリアンは躊躇なく、怪獣の首をグイっと掴むと、渾身の力を込めて牙を引っぺがした。
「ヴェギュアアアアアーーーーーー!!!!」
ビリビリと局部の皮膚が裂け、たまらず絶叫するユリアン。凄まじい痛みに失神しそうになったが、必死で耐えたユリアンは、
掴んだギギドラスの首を腹部に近づける。ギギドラスの口をこじ開けたユリアンは、その中めがけてバックルビームを放った。
ピギャアアアアアと吼えつつ、ギギドラスの真中の首は行動不能となる。
だがユリアンもまた、そのビームに全身全霊の力を込めていたため、ぐったりとうなだれてしまった。股の痛みもはげしく、立っている事さえままならない。
ギギドラスの首はあと2本残っており、今にもユリアンをその牙で貫こうとしていた。
力無きユリアンにとって、望みの綱はUGMしかいない。ユリアンは、右の首を必死で掴み、口をこじ開ける。
「ハラダ!奴の口の中を狙え!」
「了解!」
ハラダのスカイハイヤーから発射されたレーザー銃は、ギギドラスの口内にお見舞いされる。最後にユリアンは、左の口を開けさせた。
シルバーガルのレーザーが命中。3つの首を失い、バッタリと倒れこむギギドラス。仕上げに、シルバーガル、スカイハイヤーの
レーザーをまとめて喰らったギギドラスは、とうとう生命活動を停止させた。股を押さえつつ天を見上げ、やがて飛び去っていくユリアン。
「や、やったぁぁぁ!!ユリアンが勝った!ユリアンが勝った!うわーーーい!ばんざーーーい!!」
「わかったから落ち着け式神。ちょっと先生の話を聞くんだ。」
矢的は春穂の頭を軽く押さえ、地面に座らせる。
「いいか式神。お前の憧れているユリアンは、強い。でも、ユリアンだって無敵じゃない。彼女より強い怪獣の前に、ピンチに陥る事だってある。
今日の闘いだって、UGMの援護がなかったら勝てなかっただろう。」
「うん・・・そうだね・・・。」
「確かに悪い奴に立ち向かう勇気があるのは、とっても立派な事だ。その心は、ずっと忘れないで欲しい。でも、無鉄砲に立ち向かう前に、
ちょっとだけ考えるんだ。果たして相手に、自分は勝てるだろうか。もし相手に叶わずに、自分が負けてしまっては何もならないだろう?
そんな時は、なるべく最善の方法を考えてみるんだ。一人で叶わない相手がいたら、助けを呼べばいい。お前が正しいと思っている事になら、
必ずみんな手を貸してくれるはずだ。お前はいい子だ。わかってくれるだろう?」
「う、うん・・・・。あ・・・ああッ!あああああああッッッッッ!!」
「な、なんだ式神!?突然大きな声を出して・・・。」
「ラ、ライダービーナス見られなかったあああ!矢的先生が悪いんだ!矢的先生なんか大ッ嫌いだ!あっかんべぇぇぇぇ!!!」
「し、式神ぃ〜〜〜〜〜〜!!」
走り去る春穂を、ゼェゼェと追いかける矢的。どうにも彼女には、矢的の思いは届きそうになかった。
“・・・今度の転校生、春穂ちゃんにはさすがの矢的先生も手を焼いているようです。かくいう私も、彼女にどう対欧していいのかわからないんです。
なんというか、彼女を見てると、まるで小さい頃の自分を見ているような気がしちゃうんです。彼女を言いくるめようとすると、
まるで自分が叱られてるような気がしてきちゃうのよねぇ・・・・。
ここまで涼子の手紙を読んだ矢的は、呆然と天を見上げる。
「ホント、昔の君とよく似てるよ・・・・。っていうか、今も大して変わらないか・・・。こりゃますます大変になりそうだな・・・。」
― 続く ―
怪獣ファイル VOL.5
三つ首怪獣ギギドラス
3つの首を持つ大怪獣。口から吐く引力光線は、何故か相手が痺れる。容姿は某キング○ドラにそっくりだが、
少々安っぽい。体色も、黄土色なのだ。
得意技・・・引力光線 噛み付き攻撃 3つ首によるコンビネーションアタック(オイシイ所は真ん中が持っていく) 弱点・・・口の中は無防備
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