女ウルトラマン先生 第7話 ◇ユリアン対大蛸怪獣◇   

 

 

闇夜の東京湾に大蛸怪獣ダゴング出現。ハラダはスカイハイヤーで、タジマと星涼子はシルバーガルで現場に急行した。

ダゴングはタンカーを襲い、石油を飲み干す。各機はレーザー銃で攻撃を仕掛ける。だが、タジマの砲撃は精彩を欠いていた。

「タジマ隊員!どうしたんです?全然命中してないじゃないですか!」

「大丈夫だよ。どうせ俺達の攻撃なんて効きはしないんだ。そのうちユリアンが現われて、都合よく怪獣を退治してくれるさ。」

「!!そ、そんな・・・。私が操縦します!」

「星隊員、やめとけって。どうせ頑張ったって無駄だよ。おーいユリアン!来てくれぇ!」

涼子はダゴングに急接近、迫り来る触手を回避し、懐に飛び込む。

掃射したレーザーがダゴングの目に命中すると、大蛸怪獣は海底へと逃げていった。

 

基地へ帰還した隊員達を迎えるオオヤマキャップ。

「諸君ごくろう。だが奴は体力が回復したらまた出現するだろう。その時こそ決着をつける。それまで充分に体を休めておけ。解散!」

司令室を出ると、タジマが涼子に話し掛けてくる。

「星隊員、あんなに頑張る事は無いんだよ。どうせ俺たちがやらなくたって、ユリアンが倒してくれたんだ。」

「タ、タジマ隊員・・・。」

ツカツカと去っていくタジマに、涼子は声をかけることは出来なかった。

 

翌日の職員室で、矢的猛が涼子に相談を持ちかける。

「涼子先生、これ見てください。真下周男の答案なんです。」

「わあ、チカオ君、凄い点じゃない。あんなに理科が苦手だったのに・・・。一生懸命、勉強したのね。」

「それが・・・。これも見てください。そいつの隣に座ってた上野博士の答案なんです。」

「わ!さすがハカセ君、いい点取るわね・・・。って、同じ点!?まさか・・・。」

「答えが全く一緒なんです。間違っている所も一緒です。・・・こう言ってはなんですが、

 真下がここまで急激に点を伸ばすのは、どんなに頑張っても難しいところです。

 あいつは本当に、理科が苦手ですから・・・。ただ、カンニングの証拠があるわけでもないんですが・・・。」

 

2人は真下を職員室に呼び出した。涼子は、やんわりとした口調で真下に尋ねる。

「・・・ねえ、チカオ君。今回の理科のテスト・・・。凄く、頑張ったみたいね。」

「え?う、うん・・・。まあね。・・・どうせ先生、俺があんないい点とったの、マグレだと思ってるんだろ?」

「いや、そういうんじゃなくてね・・・。」

「どうせわかってるんだろ?俺、ハカセの答案をカンニングしたんだよ。俺の点、0点でいいよ!それじゃッ!」

「チカオ君待ちなさい!」

逃げようとする真下の腕を掴む涼子。真下は、涼子のスカートを思いっきりめくりあげた。

「きゃあっ!」

涼子が手を放した隙にダっと駆け出す真下。涼子と矢的は慌てて後を追う。街のあちこちを走り回り、2人を煙に巻く真下。

「はぁ、はぁ・・・。全くしょうのない奴だな・・・。取り合えず、あいつの家へ行きましょうか。」

「そうですね・・・。」

2人は真下の家へ向かう。出てきたのは、チカオの母親であった。

「チカオでしたら、今しがた帰ってきましたよ。」

「え!?そうですか。」

「でも、またプイとどこかへ行っちゃったんです。」

「彼が何処へ行ったか、わかりませんか?」

「多分、海へ行ったんだと思います。」

「海!?」

 

 

 

真下は港でスケッチをしていた。その姿を見た涼子と矢的が近づく。

「チカオくん!」

慌ててスケッチブックを隠す真下。涼子と矢的が彼を挟むようにしゃがみこんだ。

「ねえ、どうしてカンニングなんてしちゃったの?」

「・・・俺だって、たまにはいい点取りたかったから・・・。先生だって、頭のイイ奴の方が可愛いだろ?」

「そんな事ないわよ。成績なんて関係ない。ただ、チカオ君がカンニングした事が、とってもショックで・・・。」

「てっとり早くイイ点取るには、それしか方法が無いんだよ。俺、頭悪いからさ、どんなに勉強したってダメなんだよ。問題が難しすぎ!」

「う〜ん・・・。難しい問題が出たら頭抱える気持ちはわかるけど・・・。私も教員試験の時、漢字が全然わからなくて悩んだもんだわ・・・。

 なんだって日本人は漢字なんて使うんだか・・・。ひらがなだけで充分だっていうのに、全く・・・。」

ブツブツ独り言を言う涼子を諭す矢的。

「涼子先生、そのくらいで・・・。あのな真下。いい点を取りたいのはみんな同じだ。でも、そのためにみんなは頑張って勉強してるんだ。

 上野だって必死で勉強したんだ。それをお前が横から見て上野と同じ点を取ったら、あいつはどう思う?努力した事がバカバカしいと思うんじゃないか?」

「俺だって努力して、勉強してるよ!だけど、頭が悪いからしょうがないだろ!いいんだよ俺なんて、頭が悪くったって。先生とか上野みたいのが

 日本をしょってたっていけばいいんだ。俺なんて世間からいなくなったって構わないんだよ!」

2人にスケッチブックを投げつけて逃げ出す真下。思わず開いたページに描かれた絵に、2人は驚く。

「へえ・・・・。真下のやつ、以外に上手いじゃないか・・・。」

「本当ですね・・・。チカオ君を追いましょう。」

コンビナートの方へ走っていった真下を追う2人。コンビナートは、大小あらゆる建造物がたっているためどこかに隠れられたら見つけるのは一苦労である。

2人は、手分けして真下を捜す事にした。そして涼子は、小さなほったて小屋の中で膝を抱えている真下を発見、隣に座る。

そして、チカオのスケッチブックをパラパラめくっていった。

「これ、あなたが描いたんでしょう?とっても上手ね。」

「・・・そんな事、ないよ。」

「なんだか気分がとっても清々しくなるようないい絵だわ。ちょっと感動しちゃった。ねえチカオ君、確かに、日本をしょって立つような人になるには、

 たくさん勉強していい点とって、いい学校へ行って、偉くなる必要があるわ。だけどその人達だって、別の才能を発揮して、

 感動を与えてくれる人に対しては尊敬してくれるはずよ。誰か偉い人が言ってたじゃない。怪我をしても頑張る姿に感動した!って。

 君には、人を感動させるような素晴らしい絵を描く才能があるわ。君みたいな人が描く絵が心の支えになって、頑張れる偉い人だっているはずよ。

 だから君は、いなくてもいい人間なんかじゃない。」

「・・・・・。」

「今度はもう、カンニングなんてしないよね?」

その時であった。地面が揺れ、壁が軋む。大蛸怪獣ダゴングが、コンビナートに上陸。触手をうねらせ、建物を次々と破壊していく。

涼子達のいたほったて小屋が、ガラガラと崩れ去ろうとしている。

「チカオ君、逃げなさい!」

「せ、先生!」

涼子は真下を外へ突き飛ばす。その瞬間、小屋は崩壊。涼子は瓦礫に埋もれてしまう。

「せ、せんせーーーーーーいッ!」

 

大蛸怪獣の迎撃に、ハラダのスカイハイヤーと、城野、タジマのシルバーガルが駆けつける。タジマは相変わらず精彩を欠く。

ハラダが向こう見ずにダゴングに突っかかり、スカイハイヤーは撃墜される。

「バカだな、ハラダ隊員は・・・。そのうちユリアンが現われるんだから、張り切ることはないのに・・・。」

「タジマ隊員、何を言ってるの!?私たちで食い止めるのよ!」

「ユリアン、どうして出てこないんだ?このままじゃ、コンビナートがメチャクチャだぞ・・・。」

 

「真下、どうした!怪獣が近づいているんだ、逃げろ!」

「や、矢的先生!涼子先生が、瓦礫に埋もれて・・・。」

「な、なんだって!?」

瓦礫を持ち上げ、涼子を助け出そうとする矢的。真下はオロオロと立ち尽くしている。

「せ、先生!か、怪獣が近づいてくるよ!」

「くッ!・・・いいか真下、お前が涼子先生を救うんだ。俺が怪獣の目を引き付ける。頼むぞ真下!」

「そ、そんなの俺には無理だよ・・・。矢的先生、助けてくれよぅ!」

「グズグズ言うな!涼子先生が死んでもいいのか!?いいか、お前の力で涼子先生を助けるんだ。お前自身の力でな。」

矢的はダゴングの方へ向かっていく。ダゴングの正面に立ち、叫ぶ。

「怪獣!こっちだ、こっちへ来い!」

真下は半べそをかきつつも、懸命に瓦礫を押しのける。

「ち、チクショウ!・・・先生、今助けてやるからな!」

 

 

 

ダゴングの上空を旋回するシルバーガル。ぼんやりと地上を眺めていたタジマは、怪獣をひきつけようと騒いでいる矢的と、

懸命に瓦礫と格闘する真下の姿を発見する。

「あんな所に人が・・・一体何やってんだ!?あぁ、危ない!」

矢的が必死で注意をそむけるも、ダゴングの足の先が瓦礫の小屋を巻き込もうとしている。

「このままじゃあの子が・・・。畜生ユリアン、何やってる!?早く来ないと、あの子が死んでしまうぞ!」

「タジマ隊員、さっきから何を言ってるんです!?私たちで怪獣を倒せばいいだけの事でしょう!?」

「そ、そんなの無理だ。俺たちに怪獣は倒せない。怪獣を倒すのは、いつだってユリアンじゃないか・・・。」

その時通信機から、オオヤマの怒声が飛ぶ。

「タジマ!!」

「ひえ!キ、キャップ!」

「聞こえていたぞタジマ。お前がそんな気持ちでいるから、我々UGMは勝てんのだ。地球を守っているのはユリアンだけではない。

 お前には、UGM戦士としての誇りは無いのか!?」

「誇り・・・。」

「思い出せ、お前がUGMに入った頃の熱い気持ちを。お前は地球と人類のためにUGMに入隊したのだろう!?」

「ウウウ・・・。キャップ、申し訳ありませんでした!城野隊員、操縦を代わらせてもらうぞ!」

「ハイ!」

 

真下は瓦礫から涼子を助け出す事に夢中で、すぐ近くまでダゴングの足が来ている事に気がつかない。そこへ、シルバーガルが急降下して接近、

レーザー銃で触手を焼き払う。怒ったダゴングはシルバーガルに標的を定め、触手でシルバーガルを襲う。

そして真下は、失神している涼子をなんとか引きずり出す。衣服はズタズタに裂け、美しい素肌には醜い傷跡がついている。

「先生、涼子先生!起きて、起きてくれよ!」

「う、う・・・ん・・・。チカオ君・・・。チカオ君が、助けてくれたのね・・・。ありがとう・・・。そうだわ、コレ・・・・。」

涼子はしっかりと胸に抱いていたスケッチブックを真下に渡す。微笑む2人。

 

シルバーガルは奮戦空しく触手に叩きつけられ不時着する。そのショックで、意識を失うタジマと城野隊員。

鬱陶しい敵を倒した怪獣が、うねうねと触手を伸ばし、涼子達に迫る。

「せ、先生!怪獣が・・・。」

「うぅ!イタタタ・・・。」

「先生、大丈夫?」

右肩を押さえて苦しむ涼子の身を案じる真下。

「チカオ君、逃げなさい。先生の事はいいから、早く!」

「そ、そんな!先生を置いて逃げられるもんか!」

「真下!涼子先生!」

「矢的先生!チカオ君を連れて逃げてください!」

「わかりました。真下、来い!」

「そ、そんな、涼子先生は・・・。」

真下の腕を引いて逃げる道すがら、矢的は真下を諭す。

「お前の必死の頑張りは、ユリアンに届いた。ウルトラマンはいつだって、一生懸命、一所懸命な人間の味方だ。涼子先生のことは、ユリアンが助けてくれる・・・。」

その矢的の言葉通り、光と共にユリアンが登場。サっと身構え、大蛸怪獣と対峙する。ジャンプ一番、ユリアンキックを見舞うが、

ダゴングの柔らかい身体には効果がなかった。パンチやチョップも手応えを感じられない。ならばと距離を取り、左手を斜め上に、右手を水平に掲げる。

体内のサクシウムエネルギーを充填していたその時、本能により身の危険を感じたダゴングはユリアンの腕に触手を絡ませる。

光線発射の体勢を取れなくなったユリアンは、必死で触手を引き千切ろうとする。ダゴングはユリアンの足にも触手を絡め、さらに口から黒い墨を吐きつける。

「ヴェアアアアア!!」

そしてダゴングはユリアンの身体を自分の方にグイグイと引き寄せる。身体中を触手に巻かれたユリアンに抵抗は出来なかった。

 

 

 

ダゴングは首や腰に巻きつけた触手に力を込め、ユリアンの身体を締め上げる。

「ヴェアア!!ク、フゥゥ!ヌグゥ、ウアアアアアアッ!!」

四肢を捻り上げられ、無理な体勢を取らさるユリアン。筋が軋み、骨が悲鳴をあげ始める。意識が遠くなり、抵抗する力が弱くなったユリアンの身体を

引き寄せるダゴング。スルスルと伸びて来た口が、ユリアンの股に押し当てられる。

「ヴアッ!ヌグゥ、フゥアアアアア!イグワアアアアアアア!!」

突如、悶え苦しみ始めるユリアン。ダゴングは、ユリアンに食い込ませた口から彼女のエネルギーを奪い取っている。

「ヴェア!グゥアア!フシュアアアアアアアッッ!!」

敏感な部分から無理矢理エネルギーを吸い取られ、激痛を覚えるユリアン。ジタバタともがいてみるも、身体の自由が奪われた状態では脱出出来ない。

そのままユリアンの瞳の光は消え去ろうとしている。

 

「ま、まずい・・・このままでは・・・。」

矢的はユリアンの救出に向かおうとするが、となりでは真下が真剣なまなざしでユリアンを眺めている。矢的は救出に行くのをやめ、

真下と共にユリアンを応援した。

その時、シルバーガルで気を失っていたタジマが目覚める。

「あぁ!ユ、ユリアンが・・・。」

ユリアンの苦闘を目にしたタジマは、シルバーガルの発進を試みるが、エンジンが点火しない。

「クソゥ!せ、せめてα号だけでも・・・。」

タジマはα号のコックピットに移動。何とか飛行できそうなのを確認すると、α号を分離させ、ダゴング向けて突進する。

「怪獣め、ユリアンを放せぇぇ!」

地上でα号を見上げていたハラダが叫ぶ。

「タ、タジマ待て!死ぬ気か!?」

タジマは、直前で脱出する。無人となったα号が、ダゴングに命中、大爆発を起こす。爆風は、タジマをパラシュートごと吹き飛ばそうとする。

それを救ったのは、身の自由を取り戻したユリアンであった。タジマを安全な場所に下ろすと、ユリアンはサクシウム光線でダゴングにトドメをさす。

息耐えるダゴング。ユリアンは、天へと消えていった。真下と矢的は、それをいつまでも見送った。

 

タジマ達が、UGMの基地へ帰還する。タジマは、オオヤマの顔を見るなり頭を下げる。

「・・・キャップ、すみませんでした・・・。」

「全く・・・。大事なα号をメチャクチャにしちまって・・・。お前には、これまで以上に働いてもらわなきゃならんな。」

「キャップ!ハ、ハイ!これからも頑張ります!」

 

真下はまた、海を見ながら写生をしていた。背後から声をかけたのは涼子だった。

「チカオ君!また絵を描いてるの?」

「へへ、まあね。」

「相変わらず上手ねえ。ちょっとよく見せてよ。」

「ダ、ダメだよ先生!」

強引にスケッチブックを奪った涼子。そこには、怪獣に敢然と立ち向かうユリアンと、UGMの戦闘機の絵が描かれていた。ニッコリと笑みを浮かべつつ、

紙をめくっていった涼子の顔が豹変する。

「チ、チ、チ、チカオくん!なんなのこの絵は!?」

そこには、タコ怪獣に絡まれて卑猥なポーズを取っているユリアンと、服がビリビリに裂けて傷だれけで横たわる涼子の姿が描かれてあった。

「へへへ・・・。学校でみんなに見せたら、感動してくれたんだけど・・・。」

思わずダっと逃げ出す真下。プンスカと追いかける涼子。

「コラーーーーッッ!待ちなさぁーーーーーいッッッ!!」

 

“・・・チカオ君同様、自暴自棄になってたはずのタジマ隊員も妙に張り切りだして、元気になってくれました。

 私はこの世に不必要な人間なんていないと思っています。だから私はこれからも、地球人ひとりひとりのために、

 頑張って闘っていこうと思っています。

 

 P.S. 助けが無かったところを見ると、ようやく私の力を認めてくれたのかな?ちゃんと私、やっていけてるでしょ?”

 

                                   ― 続く ―

怪獣ファイル VOL.4

大蛸怪獣ダゴング
タコが巨大化した怪獣。姿はタコそのものだが、石油を飲むなど某タッ●ングと設定は似ている。
本能的にエッチなようだ。
得意技・・・タコ墨攻撃 触手攻撃 口からのエネルギー吸引攻撃   弱点・・・特攻とサクシウム光線に弱い(それは、単にやられ方なのでは・・・)

 

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