女ウルトラマン先生 第1話  ◇新任教師 星涼子◇





“前略 エイティ様・・・なんて、ガラじゃないかな?。あなたは知らないでしょうけど、コレ『手紙』っていう、地球の人達の交信手段なの。
 ウルトラサインやテレパシーよりも遅くて手魔はかかるけど、直接だと言いにくい事とか伝えやすいし、何より情著があっていいでしょ?
 そんな事より、とうとう明日から中学校の教師をとしての生活が始まります。この美しい星の未来のために、
 子供達にいろんなことを教えつつ、そして私も一緒に勉強していきたいと思ってます。もちろん、地球を守るために闘う事も忘れません。
 この地球は多くの宇宙人に狙われているし、悪い怪獣がいつ現われるかわからないですから。
 ともあれ、明日は始業式。女ウルトラマン先生として頑張ってくつもりです。遠く、ウルトラの星から見守っていてください。 

 P.S. 間違っても私の身を案じて地球に来たりしないでよ!私は1人でやっていけるんだからね!                         “

星涼子は、アパートの窓からエイティ宛の手紙を夜空に放り投げる。手紙は、テレポーテーションによってM78星雲の
エイティのもとへ届くはずである。明日は始業式。だがその前に、前々から気になっていた地域の調査も予定している。涼子は早めに寝床についた。

翌朝、いっちょうらのスーツを着込みつつ、彼女が気になっていた野原に赴いて観察を始める。
そこは、春真っ盛りだというのに冬のように草木が枯れている。石までも腐食している。怪獣が地下を通ったのでは無いだろうかと、
丹念に地面を調べていく。するとそこに、中年の男が立っていた。
「朝早くから、綺麗な女性がこんな所で何をしているんですか?」
「き、綺麗だなんて・・・。それより、あなたもここが何か怪しいとお考えなんですか?」
「ああ。すると君も、これは怪獣の仕業だと思っているのかい?」
「はい。怪獣が地中を掘り進んでいった結果、ここの草木は枯れ、土や石も腐食しているんだと思います。」
「・・・君は何故、怪獣は現われると思う?」
「地球はとても美しい星です。でも、地球の人達は皆、多かれ少なかれ醜い心や悪い心を持っています。そういった物が寄り集まって、
 怪獣が現われるんだと思います。今の世の中には醜い心や悪い心が満ち満ちています。だから、怪獣は出ると思います。」
「君は若いのに、しっかりとした考えを持っているね。」
「私、この春から中学校の教師になりました。地球の子供達は、このまま育ったら怪獣になってしまうような子供もいるんです。
 私は、怪獣が生まれてくる根本を叩き潰したいんです。私は、怪獣と闘うのと同じような気持ちで先生になったんです。」
「そうですか、頑張って下さい。ところで学校といえば、そろそろ始業の時間なんじゃありませんか・・・?」
「い、いけない、もうこんな時間!初日から遅刻なんてシャレになんないわ!私、失礼します!それじゃッッ!」
ダっと駆けていく涼子。男は、にこやかな笑みを浮かべて新米教師を見送る。

始業式はすでに始まっていた。全校生徒が校庭に集合し、担任の紹介が行われているところであった。
「ス、スミマセ〜〜〜ン!今日からこの学校でお世話になる、星涼子でぇぇぇす!!」
桜咲く桜ヶ岡中学の校門から駆けて来る涼子。
「コ、コリャア〜ッ!星先生ッ!就任早々遅刻とは、何事ですか〜ぁ!」
校長の小言を聞き流し、壇上に飛び乗る涼子。マイクに向かって叫んだ。
「遅れてすみません!今日からみなさんと一緒に勉強する、星涼子です!科目は保健体育!みんな、よろしくお願いします!」
一瞬あっけにとられ、騒然とする生徒達。そのうちの1人の囁きが、涼子の耳に届いた。
「オイ、女の先生だぞ。体操なんかできんのか?」
その言葉にカチンと来た涼子は、ダダっと鉄棒の方に走っていく。綺麗なおべべである事など気にもとめず、
鉄棒にぶら下がり、華麗に大車輪を決めて見せた。ムーンサルトで着地、喚声をあげる生徒達。調子に乗った涼子は前転、側転、後転を次々と披露。
空中回転で壇上に飛び乗り、ビシっとポーズを決める。湧き上がる拍手。
「白だ!」
「白だ!」
「白だ!」
校長も手を叩いて喜ぶ。
「白だぁ〜〜!うひょひょ〜〜〜!!」
「こ、校長先生までなんザマスか!星先生!スカート姿でそのような事をするだなんて、破廉恥すぎるザマス!」
教頭のヒステリックな怒号に、思わず顔を赤らめる涼子。
「アララ、あたしとした事が・・・。」





職員室に、メガネ教頭のカミナリが落ちる。
「星先生!遅刻ばかりでなく、あんな破廉恥な行動するだなんて、あなた教師というものをなんだと思ってるザマスかッッ!?」
「す、すみませぇ〜〜ん・・・。でも、みんなウケてくれたし、良かったんじゃありませんか?」
「ワシはとっても良かったと思いますがねぇ〜〜〜。」
「校長先生は黙ってて下さい!とにかく、あなたは教師なのですから、いつまでも学生気分でいられては困るんザマス!
 もっと教師としての自覚を持ってですね・・・。」
教頭の説教を遮るかのように、1人の男性教師が口を挟む。
「あの、そろそろ朝のHRに行かないと・・・。」
「そ、そうザマした。えー星先生。彼は、あなたの担当する1年E組の副担任となってくれる方です。名前は・・・。」
「始めまして涼子先生。僕、矢的猛といいます。理科を教えています。」
「あ、ど、どうも、はじめまして・・・。あの、どこかでお会いした事ありませんでしたっけ?なんだか、初めて会った気がしないんですけど・・・。」
「いや、初対面ですよ。あなたのような美しい方に会ったら、僕は忘れたりしませんよ。アッハッハ!さ、教室へ行きましょうか。」
「は、はぁ・・・。」

「・・・と、いう訳で、私がこの1年E組の担任、星涼子です。みんな、よろしくね!」
「ヨロシクッ!白パン先生!」
お調子者の生徒の言葉に湧き上がる笑い声。まったく、という表情をしつつ話を続ける涼子。
「ゴホンッッ!とにかく、私は教師としては新米だけど、一生懸命、一所懸命に頑張るつもりです。みんなも一緒に、頑張りましょうね!
 ところで、何か私に質問はある?」
“好きな男性のタイプはー!?”“3サイズ教えてー!”“今日の下着の色はー!?あ、白か”などのくだらない質問は聞き流す涼子。
「先生はどうして体育教師になったのでありまするか?」
「おッ!メガネくん、いい質問だわ。みんなも見てくれたと思うけど、私は運動神経抜群なの。体育教師こそ私の天職だって思ったワケ。」
実は教員免許の試験はギリギリ合格だった。基本的に頭はいいのだが、漢字が苦手だったのだ。そんな事は口が裂けても言えない。
「それから、このクラスの副担任をやっていただく、矢的猛先生です。理科を教えてくださいます。」
「みんな、よろしくな!」
涼子は、これから共に勉強していく1年E組の生徒達の顔を眺めていった。いかにも秀才風のメガネ少年に、リーダー風の気の強そうな少女。
自信なさげにうつむいている少年や、ボンヤリと窓の外を見つめている、斜に構えた感じの少女など様々な顔、顔。
地球の未来はこの子達にかかっている。よりよい地球を目指すべく、彼らを立派な大人に育てていくのが私の仕事なのだわと感慨にふけっていた時、
1人の女生徒がガタっと立ち上がる。
「な、何?なんかあったの?」
「あれ・・・。」
女生徒が指差した方向には、巨大生物の姿が。腐食した土を産み出した元凶、月の輪怪獣クレッセントの姿であった。
「うわああああッッ!か、怪獣だぁぁぁ!」
パニックに陥る生徒。
「みみみみ、みんな落ち着きなさい!ま、まずは机の下に隠れるのよ!じゃない、ハンカチを口に当てて校庭に避難なさい!でいいんだっけ!?」
「涼子先生、あなたが落ち着いて下さい。」
矢的が涼子を諭す。怪獣はゆっくりと、学校の方に向かって歩みを進めている。
「アッ!UGMのスカイハイヤーとシルバーガルだ!」
男子生徒が叫ぶ。地球防衛組織、UGMの戦闘機が怪獣に対しスクランブルをかける。レーザー砲を掃射、クレッセントにお見舞いするが、
怪獣は何事も無かったかのように暴れまわる。ガラガラとビルを崩壊させ、我がもの顔で歩を進めるクレッセント。
懸命に攻撃するシルバーガルに向け、目から怪光線を発射した。
「ウワアアア!脱出!」
ハラダとタジマのパラシュートがシルバーガルから飛び出した。





「た、大変だわ!」
未曾有の危機に、窓から身を乗り出す涼子。いてもたってもいられず、現場へ駆けつけんとしている。呼び止める矢的。
「り、涼子先生、何処へ行く気ですか!?」
「このままじゃ学校が危ないわ!矢的先生、みんなをお願い!」
「ま、待って下さい!危険ですッッ!落ち着いてくださいッッ!」
「モタモタしてる時間は無いの!」
サっと窓から飛び出していく涼子に、矢的が叫ぶ。
「ここは3階なんですよーーーーーッッッッ!」
「わ、忘れてたぁ〜〜〜〜〜〜〜!!」
ギューーンと落下していく涼子がドスンと大地に降り立った。ウルトラとはいえ、さすがに足がしびれる。それでも涼子は怪獣の方へ
向かって駆け出していった。逃げ惑う人々と反対方向に走る涼子。その時、オオヤマキャップの乗るスカイハイヤーが
クレッセントの攻撃を喰らい、涼子の近くへ不時着する。スカイハイヤーのコックピットによじ登る涼子。
「だ、大丈夫ですか!?あ、あなたは!」
あの野原で出会った中年の男こそ、UGMのオオヤマであった。
「ク、クソ!足が・・・。」
「・・・・。」
UGMの戦闘機が撃墜された今、地球人たちに怪獣に対抗する手段はない。涼子は怪獣の方角へ真っ直ぐに走っていく。
「き、君ッ待て!それ以上近づいちゃ危険だ!」
オオヤマの声は聞こえない。大地を揺るがし侵攻するクレッセントの行く先には、桜ヶ岡中学がある。
「私達の学校を、壊させるわけにはいかないッッッッ!!」
涼子は右腕を高々と掲げる。その腕にはめられていたブレスレットが眩い光を放つ。
「ユリアンッッッ!!」
涼子を照らす光は、彼女の着ていた衣服を一瞬にして蒸発させた。そして、裸身の地球人女性は少しずつ巨大化しつつ、
体色を白銀へと変貌させていく。銀色の素足に紅いブーツが履かされ、黒々とした茂みがあった箇所に紅いVラインが浮き上がってくる。
淡いピンク色をしていた乳房の先端も銀色に染まり、そのふくよかな上半身にもラインが走る。、
そして頭部はすでに銀と赤のツートン、そして金色に輝く瞳を持った光の国の戦士のものに変わっていた。女ウルトラ戦士、ユリアンの登場だ。

学校の窓からその光景を眺める1年E組の生徒たちと、矢的猛。
「な、何者だ、ありゃ!?」
「・・・ユリアン・・・。ユリアン、頑張れ!」

クレッセントに組み付くユリアン。怪獣を投げ飛ばしつつ、華麗なステップで距離を置き、再び突進。
「ヴェアア!フヌアアア!!」
掛け声と共にパンチをお見舞いするが、クレッセントの反撃のパンチを喰らい、よろめくユリアン。さらなる一撃で吹っ飛ばされた。
体勢を立て直し、果敢にクレッセントにキックを見舞うが効果がない。怪獣の怪力によって投げ飛ばされる。
立ち上がったユリアンは天高く舞い上がり、必殺の飛びげりをぶちかました。だが、怪獣の厚い皮膚に跳ね返されはじき返される。
「ヴェアーーーーーッッッ!!!」

「ユ、ユリアンキックが効かないのか・・・。みんな、ユリアンを応援するんだ!」
「頑張れ!ユリアン、頑張れぇーーー!!」
矢的に促され、ユリアンに声援を贈る生徒達。その声が届いたのか、懸命に立ち上がるユリアン。
だが、怪獣の目から発せられた怪光線がユリアンを捕える。
「ヴフゥアアアアアアアッッッッ!!」
ひざまずくユリアンにノシノシと近づくクレッセント。ユリアンの身体を引きずりあげると、力任せに放り投げる。
ビルに叩きつけられるユリアン。仰向けに倒れた彼女めがけてお見舞いされる怪光線。激痛のあまりエビ反りになり、悶え苦しむ。
クレッセントはユリアンを抱きあげ、腰をギリギリと締め上げる。さらに、超至近距離から怪光線を発射した。
「ヴエアアアアアアアアアアアアア!!!」
ジワジワと胸を焼かれ、もがくユリアン。必死のチョップで脱出するがダメージは大きく、胸を押さえてうずくまる。いつの間にか背後に回りこんでいた
クレッセントは、自慢の牙をユリアンの肩口にめり込ませていった。





「ヴェアアアアアアアアアアア!!!」
ギリギリとユリアンの肩に沈み込んでくるクレッセントの牙。意識が遠のき、瞳の輝きも消えそうになる。
クレッセントが牙を外すと、ユリアンはグッタリと倒れ込んだ。そして、クレッセントはトドメとばかりに怪光線を放つ。
それは、ユリアン最大の弱点である股間めがけて照射された。
「グフゥワアアアアアアアアアアアアアアッッッッッ!!!」
ユリアンの恥丘から、煙がジュワァァァっと立ち込める。やがてピクリとも動かなくなったユリアン。クレッセントは焼け爛れた股ぐらをわざと踏んづけつつ
ユリアンの上を通過し、再び歩みを進める。徐々に学校に近づくクレッセント。教室から眺めている生徒達がパニック状態に陥った。
「や、矢的先生!もうダメだ、逃げましょう!矢的先生!」
「うろたえるな!ユリアンはまだ負けたわけじゃない。彼女を信じるんだ!彼女を応援するんだ!」
矢的はただ一点、倒れ伏したユリアンを見つめている。

すでに意識を失っていたユリアンの脳に、何者かの声が響き渡る。
「(ユリアン・・・。目を覚ませ、ユリアン・・・)」
「(あ、あなたは・・・エイティ・・・?)」
「(立つんだユリアン。学校が窮地に陥っているんだぞ。このままでは、学校が破壊されてしまう・・・)」
「(そ、そんなのイヤ・・・。絶対に、そんな事させない・・・。で、でも・・・。今の私の力では、あの怪獣を倒すことは出来ない・・・)」
「(聞こえないか?君を応援する声が・・・。こんな事でくじけていて、彼等を導くことなんて出来るのか?)」

「ユリアン、頑張れ!」
「立ってくれユリアン!怪獣をやっつけてくれぇ!」
「ユリアン!ユリアン!」

「(き、聞こえる・・・。みんなの声が・・・)」
ユリアンは、教え子達の声援を受けてムクリと立ち上がる。
「(ユリアン、僕の言う通りにするんだ。まず、左腕を斜め上に、右腕を水平に構えるんだ。そして、精神を集中させる・・・)」
エイティの指示どおりの構えを取り、精神を集中させるユリアン。
「(左手を前方にそえ、その上に右腕を縦に置く。それと同時に、君の体内に流れるプラズマエネルギー、サクシウムを解き放つ)」
L字に構えたユリアンの右腕が、光り輝いていく。
「(叫べ!サクシウム光線だ!)」
「サクシウム光線ッッッ!!」
ユリアンの右腕から、赤と青の光の流波が撃ち放たれる。怪獣クレッセントは、その光線を受けた瞬間嘶き、ドスンと崩れ落ちる。
絶命したクレッセント。歓喜の声をあげる生徒達。矢的もニッコリと微笑んだ。そして、天へ飛び去ったユリアンを皆で見送った。

その日の放課後の職員室。涼子は教頭の前に立たされた。メガネ越しの鋭い視線が涼子に突き刺さる。
「星先生、聞いたザマスよ。あなた、生徒達をほッぽり出して、一人でお逃げになったそうザァマスねぇ。」
「わ、私逃げたわけじゃ・・・。」
「言い訳は無用ザマス!全く、本当に最近の若い子ときたら・・・・」
説教は延々と続いた。ようやくにして説教地獄から解放された涼子の肩をポンと叩く矢的。
「随分としぼられたみたいですね。ま、そんなに気を落とさないで下さい。」
「はーあ。教師もラクじゃないわねぇ・・・。」
「どうです?気晴らしに、食事にでも行きませんか?美味いラーメン屋知ってるんですよ。僕がおごりますから・・・」
「ゴメンナサイ。私これから行かなきゃいけない所があるんです。急いでますんで、失礼します!」
ぴゅーっと学校を飛び出していく涼子。呆然と彼女を眺める矢的。
「やれやれ。教師になったというのに、相変わらず鉄砲みたいな娘だな・・・。」

涼子が駆け込んだのは、UGMの基地であった。涼子はズカズカとオオヤマの元へ赴き、UGM入隊を直訴。
そのあまりの迫力に気圧されたオオヤマは、涼子をUGMの準隊員として迎え入れることを、なかば強引に承諾させられた。

“・・・と、いうワケで私、明日からは放火後と休みの日にはUGMの隊員として働く事になりました。
 怪獣を倒すため、少しでも地球人の力になりたかったからです。さすがに大変だとは思いますけど、一生懸命、一所懸命頑張りたいと思います。
・・・それと、わざわざテレパシー送ってくれたみたいだけど・・・。今日はホントにヤバイところだったから、と・り・あ・え・ず、お例は言っておくわ・・・。
ありがとう・・・。でも、いつまでも犯人前扱いしないでちょうだいね!私はもう一人前の戦士なんだから!

 P.S. くれぐれも、地球に来たりしないでよ!あなたの力なんか借りなくたって、私ちゃんとやっていけるんだからッ!             “

一筆したためた涼子は、手紙を夜空に向かって投げる。ウルトラの星にいる、エイティに向けてテレポートさせた。・・・はずだが、
その手紙は近所のボロアパートに住む矢的猛の元に届けられた。
「ま、頑張って下さいよ。影ながら、応援してますからね・・・。」


                                   ― 続く ―

 

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