FINAL SUPER DYNAMITE ―科学戦隊 最後の闘い―
―PROLOGUE―
M78星雲、光の国。王女ユリアンが、こっそりと飛び出そうとしていた。
「ユリアン王女、どこへ行かれるのです?」
「あ!80(エイティ)!・・・ハァ・・・また見つかっちゃったわ・・・。」
「そんなに行ってみたんですか?地球に。」
「だって、宇宙で一番美しい星なんでしょう?」
「・・・王女、例えどんな事があろうとも、姿を消したまま、地球人の前には現われないと誓えますか?」
「え!?」
「誓えるのであれば、今回は見逃しますよ。」
「誓うわ!何があろうとも姿を現さないわ。他所の星の問題に対して、必要以上の干渉はしない。これは、宇宙警備隊の掟ですものね。」
「絶対約束を守ってくださいよ。では、お気をつけて・・・。」
「ありがと、エイティ。じゃあね!」
「やれやれ、とんだジャジャ馬だな・・・。王女としての自覚というものが無いのかな・・・。」
ピュ―ンと飛び去るユリアンを見送るエイティ。王女ユリアンは、あっという間に見えなくなった。
―1―
ジャシンカ帝国を壊滅させた、科学戦隊ダイナマン達。闘いは終わり、5人の若者はそれぞれの夢を追い始める。
ダイナピンクこと立花レイの夢は、動物と自由に会話することである。レイは、仲間同士で会話をしていると言われるイルカについて研究をしようと、
小笠原に赴いた。1人ボートで沖に出ると、周りにハシナガイルカが集まってきた。レイは、水着に着替えた。
「これは・・・。外した方がいいかな・・・。」
科学戦隊に入隊後、肌身はなさず右腕に装着していたダイナブレスを外し、畳んだ洋服の上に置くレイ。
軽くなった腕を天に掲げて伸びをした後、イルカの群れの中へ飛び込んでいった。泳ぎは決して達者な方ではないが、
青く美しい海中をイルカ達と戯れる。イルカ達も、レイに対して好意的のようであった。
その時、レイの動物的直感が危険を察知する。
「な・・・何かが来る・・・。みんな、ここから逃げるのよ!」
レイの言葉が通じたのかどうかはわからないが、イルカ達は一斉に去っていく。イルカ達がいなくなった後も、周囲を警戒するレイ。
その彼女に接近してきた何者かのスピードは、圧倒的であった。この速度は、地球に存在するいかなる海洋生物にも出せないだろう。
その生き物がレイの足に取り付いた。
「ウ、ウアアアアア!モ、モグワアアアア!!」
何者かに海中に引きずり込まれるレイ。必死で脚をばたつかせ、脚を掴んでいる何かを振りほどく。何とかボートまで泳ぎ付いたその時、
レイの背後から何者かが飛沫をあげて飛び上がり、そして正面に降り立つ。その姿に、驚愕するレイ。
「し、進化獣!?」
「ギョギョギョギョ・・・。俺様の名は、サメシンカだぁ!」
「そ、そんな馬鹿な・・・。ジャシンカ帝国は滅亡したはずなのに!」
「そう、貴様等科学戦隊によって、我々は壊滅させられた。だがその時俺様は、進化獣発生装置・プログレッサーの内部にいたのだ。
殺されたジャシンカ帝国の同胞達の怨念が、この俺様を復活させたのだ!俺様の目的は復讐だ。ダイナマンどもに、
我等の恨みをたっぷりとその身に受けてもらい、そして1人残らず死んでもらう。まずはダイナピンク、貴様からだぁぁ!」
「そうはいかないわ!一匹たりとも進化獣を残すわけにはいかない!」
グっとファイティングポーズを取るレイ。そしてその視線は、サメシンカの向こう側にあるダイナブレスに向けられた。
まずは、あれを装着せなばならない。それを察知したサメシンカは、ダイナブレスを掴み取った。
「ほほう、これでダイナマンに変身するのか。こんなもの、こうしてくれる!」
「あぁ!」
怨敵にとっては、命の次に大事な腕輪を進化獣は海へ放り捨てた。レイは思わず海に飛び込む。
「(ダイナブレス・・・。あれがなくては、進化獣にまともに闘えないわ・・・。沈んでしまう前に、取り戻さなくては・・・。)」
必死でダイナブレスを捜すレイ。それを進化獣が黙ってみているはずは無い。レイなど相手にならない泳力であっという間に彼女に接近。
まずは突進し、鼻先をレイに叩き込む。思うように身動きの取れないレイをおちょくるかのように何度も突進。
そしてレイの身体をガッシリと掴み、どんどんと海中へ沈んでいく。
「(ウアアア!く、苦しいぃぃ!)」
肺に海水が入り始め、水圧で耳鳴りがする。もがけばもがくほど、窮地に陥っていくレイ。するとサメシンカは突如海面に向かい始める。
海上に飛び出すや、レイをボートの甲板に叩きつけた。ゲホゲホと咳き込むレイに近づくサメシンカ。
「ギョーギョッギョッギョッギョ!簡単に殺してしまっては恨みを晴らすことは出来ん。じっくりといたぶってやるぞ。」
「クッ!」
レイは必死に立ち上がり、サメシンカに組み付く。海中では相手にならない。ここでなんとか進化獣をたじろかせ、
その隙にダイナブレスを見つけ出す以外に助かる術は無い。だが、人間立花レイの攻撃では進化獣にダメージを与えられない。
「ギョオッホッホッホ!弱い、弱いぞダイナマン!そんな力で、この俺様に勝てるものか!」
「キャアアアアアアアア!!」
サメシンカに横っ面をはたかれただけで吹っ飛ぶレイ。さらに高々と持ち上げられ、ボートの床に叩きつけられる。
大の字に倒れ、肩で息をするレイの前に仁王立ちするサメシンカ。そして、サメのヒレに似た右腕をレイに見せつけた。
「俺様は、メカシンカへの実験途中で生を受けてな。こんな事もできるのだ!」
サメシンカのヒレが、とげとげしいキリのように変化していく。その形状はまさに、ノコギリザメの鼻先の形であった。
鋭い先端をレイの胸元で振るう。すると、レイの水着だけがスパっと切り裂かれた。
「キャア!」
露となった乳房を思わず覆い隠すレイ。さらにサメシンカは、レイの股を隠す部分も切り刻む。そこを隠そうとする事で、レイは身動きが取れなくなる。
「ウ、ゥゥゥ・・・。」
「さて、次は何処を切り刻んで欲しい?」
「じ・・・冗談じゃないわ!」
レイは羞恥心などかなぐり捨てた。所詮相手は進化獣。恥ずかしがっても仕方が無い。なによりそんな事をしていては命が危ない。
ダっと起き上がり、サメシンカにキックを決める。それが効かなければ、正拳や手刀を叩き込む。涼しい顔でそれを受けるサメシンカ。
「ギョオッホッホッホ!くすぐったい、くすぐったいぞダイナピンク!」
サメシンカはレイを蹴り飛ばす。のた打ち回るレイの腹をガシガシと蹴りつける。そして、レイの股をギュっと踏みつけて嘲け笑う。
「ギョアッハッハッハ!ダイナマンなど恐るるに足らずだ!」
「グア!アアアア!だ、ダメ、勝てない・・・。み、みんな、みんな助けて!」
サメシンカは今度は左腕を差し出す。するとサメシンカの左腕は、シュモクザメの頭の形に似た鉄鎚(ハンマー)へと変化する。
もはやレイは死を覚悟した。怨念を糧として生まれた進化獣に対して、なす術は無い。サメシンカにのしかかられても、抵抗できなかった。
「ギョオアッハッハッハッハッハァァァァ!」
高笑いしつつレイのこめかみにハンマーをブチ当てるサメシンカ。レイは、衝撃で意識を失う。
「ギョホホホ・・・。安心しろ。まだ殺しはしない。ジャシンカ帝国の亡霊たちは、この程度では恨みは晴れんと言っておる。
もっとじっくり、もっとたっぷりと痛めつけてやるぞ。ギョハハハハハ!」
サメシンカはレイを担ぎ上げる。復讐は、まだ終わらない。
―2―
“ダァイナピィンクゥゥ・・・。よくも、よくも我等を殺してくれたなぁぁぁぁ・・・。”
“許さんぞダイナピンク・・・。呪って、呪って、呪い殺してやる・・・。”
無数の進化獣やメカシンカ、そして雑兵シッポ兵までもがレイを襲う。見たことも無い不気味な空間の中で漂う身体。
逃げようにも、身体が動かない。
「イ、 イヤア、ヤメテェェェェェェェェェェ!!!」
ハッと目を覚ますレイ。あの光景は、悪夢だった。だが、レイが絶望的な状況に陥っている事にかわりはない。
視線の先には、サメの怪物、サメシンカがいた。そしてレイは、どこか見覚えのある赤い服を着せられている。
赤い服は、まるで意志をもっているかのようにレイの身体を締め付けていた。
「ウ、グゥゥ・・・。こ、これはまさか・・・。」
「ギョギョギョギョギョ・・・。そう、貴様が今着ているのは、悪の花、王女キメラ様のお召し物だ!」
蘇る悪夢。かつて、この服を着せられたレイは呪いによって苦しめられた経験がある。
“ダイナピンク、よくも私達を殺してくれたね!この恨み、ただじゃすまないよ!”
レイの脳裏に響く、王女キメラの声。かつての彼女の着衣が、ギリギリとレイの身体をしめあげる。
「ウ、ウアアアアアア!!ヒ、ヒィィ!イヤァァァァッ!!」
「ギョオホッホッホッホッホ!そうだ、もっと苦しむんだダイナピンク!全ジャシンカの死者達の怨念を、その身に受けるのだ!」
「グ、グゥゥ、アァァ!わ、悪いのは、みんなの夢を奪い、地球を侵攻しようとした貴方達の方でしょう!?」
「亡霊たちに、そんな道理が通用するとでも思っているのか!?ギョハハハハハーーーーーーーーー!!」
両腕がミリミリと捻りあげられる。さらに履かされた靴がレイの足を左右に引っ張り始める。股関節が、グキグキと音を立て始める。
「キャアアアアア!!ウ、ウアアアア!!ダ、ダメェ、グハァアアアア!ギャアアアアアアアア!!」
「いい泣き声だダイナピンク。ジャシンカの民も、あの世で喜んでいるに違いない!ギョハハハハハーーーーーーー!」
容赦なくレイをいたぶるキメラの服。今度は胸や腹をギシギシと締め付け始める。
「ググゥ!く、苦し・・・グ、グフア、ガフアアアアアアアッ・・・・アァ・・・あ・・・・・・。」
レイは頬を涙で濡らし、口から血を吐きながら意識を失った。
「フン・・・。気を失ったからといって、この呪いは解けるものではないぞ・・・。目一杯苦しむことだな。ギョアッハッハッハッハ!!」
ピクリとも動かなくなったレイを置き去りにし、サメシンカは何処かへと去っていった。
“フフフフ・・・。ダイナピンク、今度はお前さんの精神を痛めつけてあげるよ・・・”
“キ、キメラ!?”
“アタシだけじゃないよ・・・。まわりを見てごらん・・・。お前さんに恨みを持ってる連中がみんな来てくれたよ・・・。
みんな、お前を殺したくて殺したくて仕方が無いんだ。そしてこの妄想の世界では、お前さんは何度だって死ぬことが出来るんだ・・・。
お前さんの実体が、発狂死しない限りね・・・。”
“こ、こないで・・・こないでぇぇぇぇ!”
漁船が、タンカーが、何者かによって沈められていく。海は汚れ、生態系は狂っていく。事故現場は、小笠原諸島を中心に広がっていた。
海の異変にいち早く気がついたのは、ダイナブルー=島洋介であった。彼は、全国に散らばっている仲間たちに、進化獣復活の可能性あり、
と連絡を入れ、『ダイナステーション』への召集を試みる。だが、レイにだけは連絡がつかない。彼女のダイナブレスは今、深海に沈んでいる。
そして当の彼女は、ジャシンカ帝国の呪いと必死に闘っていたのだ。
カエルシンカ、ナメクジシンカ、ジェットムササビ・・・・。ダイナマンと死闘を繰り広げ、志半ばに倒れていった進化獣の亡霊達が、
レイに近づいてくる。そして積年の恨みを晴らそうと、レイに一斉に取り付いた。
殴打や蹴りだけでは済まされない。鋭い刃物をレイの肌に突きつけたり、怪力でレイの身体を締め上げる者もいる。
「キャアアアア!ウ、ウアアアアア!グ、グファ、イヤァァッ!アァァ!アァァァ!ギャアアアアアアアアアア!!」
“そうだダイナピンク、もっと泣き叫べ!我等の苦しみは、こんなものではないぞ!殺してやる!殺してやる!殺してやるぅぅぅ!!”
「ガフゥアアア!ダ、ダメェェェ!ギ、ィヤアアアアアア!!グワァァ!アァ!ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!!!」
レイの身体がバラバラに引き裂かれる。だがこれは全て、レイの脳内でのみ行われている惨劇である。次の瞬間、レイの身体はすっかり元に戻る。
そしてまた、進化獣の復讐が開始される。
“一度や二度ぶっ殺した程度では恨みは晴れない!今度は、心臓を刺し貫いてやるぅぅぅ!”
蘇っては殺され、蘇っては殺されるレイ。ジャシンカ帝国の怨霊たちの思うが侭にされる。ダイナピンクを殺したいと思う怨念が、レイを変身させる。
もちろん、レイにダイナピンクとしての力など出せない。ダイナピンクはいいようにボコボコにされ、
そして怪人に引っ掴まれた四肢が、ブチブチと引き抜かれていった。
さらに頭を掴まれ捻り上げられる。やがてダイナピンクの首がブチリともがれた。
そんな目にあわされても、次の瞬間に新たな身体と命が与えられ、別の進化獣の復讐の対象にさせられる。
「アァァ・・・アウァ・・・・。グ、ゥフゥアアア・・・ガ、アァァァ・・・・。」
延々と地獄を見続けさせられるレイ。もはや、まともな思考も出来なくなってきた。
―3―
ダイナステーションには、4人の戦士が集結していた。そして、次々に巻き起こる原因不明の海難事故は、
人為的なもの、すなわち進化獣の仕業であると確信する。ジャシンカ帝国の残党が、自分たちをおびき寄せているのに違いない。
科学戦隊は進化獣の掃討を誓う。だがそこに、レイの姿はない。
「ダメだ、どうしてもレイには連絡が取れない。」
「まさか、レイの身に何か・・・。」
「クソ!こんな時に、ダイナロボとダイジュピターは整備中だなんて・・・。」
「ジャシンカ帝国との闘いが終ったばかりだから仕方がない。俺たちも手伝おう。いそいで整備を終らせて、現場へ飛ぶんだ。」
レイに襲いくる次なる恐怖。ジャシンカ帝国の怨念が、レイの貞操を奪い取ろうとする。しかも、その役目が与えられたのは、
無数の雑兵シッポ兵である。
「ヒィ・・・イ、イヤァ・・・。お願い、やめてぇぇぇぇっ!!」
ワラワラとレイに群がるシッポ兵。かつて自分達は、いとも簡単に片付けてられてきた。その怨敵ダイナピンクを、思うがままに凌辱が出来る。
雑魚とは思えぬ、凄まじい怨念の力が、レイを襲った。穴という穴に、粗末ではあるがギンギンたぎっている男根がねじ込まれていく。
「も、もうやめて!みんな助けて!私、私もうダメェェ!おかしく、おかしくなっちゃうぅぅぅ!ギヒィィィィィ!!」
彼女にに休息など与えられない。絶え間なくレイの肌、そして体内にぶちまけられる有尾人一族のスペルマ。狂ったように泣き叫ぶレイ。
レイの実体はピクリとも動かない。肉体的には大きな外傷は無いが、精神はすでに崩壊している。
かろうじて、生命活動を取り留めているような状況であった。そのレイの元に、美しい海を汚した張本人、サメシンカが近づく。
一仕事終えたこの怪人は、怨敵の最期を見届けに戻ってきていた。
「ギョギョギョギョ・・・。どうやらダイナピンクはお終いのようだな。さてと、残りの連中を迎え撃つ準備でもするか。」
そこへ、オイルにまみれた一羽のカモメがフラフラと飛来してきた。そのカモメが咥えている物は、レイのダイナブレスであった。
「な、なんだこの鳥は!?」
カモメが、レイの肩に降り立ち、ダイナブレスを彼女に返還する。クークーといななくカモメ。そしてレイは、ゆっくりと目を開き、
アワアワと口を動かせる。
「わ、わたしのダイナブレス・・・。」
(イルカ達が見つけてくれた・・・。それをボクが、届けに来た・・・。イルカ達も、そしてボク達の仲間も、
海が汚されていったせいで、みんな死んでいった・・・。レイ、お願いだ・・・。みんなの仇をとって・・・)
レイには確かに、カモメの声が聞こえた。本当にカモメがそう伝えたのか、レイによる脳内補完なのかどうかはわからない。
いずれにせよレイの脳裏にはハッキリと地獄絵図が映し出される。燃えさかる海。海中に没していく魚達。海面を漂う海鳥達の亡骸・・・。
「ウ・・・ウゥ・・・。よ、よくも地球を・・・。みんなを・・・。」
おぼつかぬ指使いで、ダイナブレスを握り始めるレイ。
「この、クソ鳥めが!」
サメシンカは鋭いノコギリで、カモメを切り裂く。懸命に羽ばたき、レイの元にたどりついたカモメはあっさりと絶命した。
「ゆ・・・ゆるさない!!ウアアアアアアアアアアア!!!」
ダイナブレスが輝く。ピンク色のダイナスーツがレイを包み込む。
「お、おのれダイナピンク!」
「ウオアアアアアアアアアアアア!!」
吠えるダイナピンク。その戦闘スタイルは、かつての華麗な闘いからは想像もつかないような荒々しさであった。
科学戦隊の一員とは思えぬ、野性的な猛攻にたじろぐサメシンカ。
「えぇい鬱陶しい!たかがメス一匹に、何が出来るか!」
サメシンカの反撃が始まる。ノコギリによる袈裟切りで、ダイナスーツが火花を散らす。ボディにハンマーをぶち込まれ、
ダイナピンクの肢体がグニャっとひしゃげる。だが、彼女はひるまなかった。たとえ身が引き裂かれようとも、この進化獣だけは倒さなければならない。
本能のみで動き、闘うダイナピンク。サメシンカも必死に抵抗する。ジャシンカ帝国の復讐を成就させるためには、ここで死ぬわけにはいかない。
ピンクとホワイトで構成されたダイナスーツの繊維がビリビリと引き裂かれ、レイの素肌が露出しはじめる。
やがて、真っ赤な鮮血がブシュワっと飛び散りはじめた。なおも攻撃の手をゆるめないサメシンカの渾身の力を込めたハンマーの一振りは、
ダイナピンクのヘルメットに大きな裂傷を与える。
「ウアアアアアアア!!グ、グゥゥ!ヌゥワアアアアアアア!!!」
剥き出しになった回路から火花が飛び散り、レイの素面に苦渋の表情が浮かぶ。無理矢理立たせられたダイナピンクのみぞおちに、
ボコっとハンマーが叩きつけられる。
「グフォオアアアア!!」
大量の血を口から吐き、悶絶するダイナピンク。さらにサメシンカは、ダイナピンクの腹にも痛恨の一撃を与える。
腹を抱えながら、うつ伏せに倒れるダイナピンク。ダイナピンクの突き出された尻に、ノコギリの先をつき立てるサメシンカ。
「ウギャアアアアアアアアアアアアッッッッッッ!!!」
丁度菊穴の位置に先端が刺さり、痛みの余りレイは失禁してしまう。ダイナスーツの白い部分に、ジュワっと水分が染み渡る。
さらにサメシンカはプスプスとダイナピンクの尻をつつき、彼女が悶絶するサマを嬉々として眺める。
尻の部分は真っ赤に染まり、さらにサメシンカのノコギリの一振りが背中をザックリと切りつける。
ケダモノのような咆哮をあげ、その後ぐったりとなったダイナピンク。サメシンカは怨敵の死を確認しようとノコギリのけっさきで彼女の身体をつついてみた。
すると、ダイナピンクはピクっと反応。彼女の生命力の高さに思わずギョッとするサメシンカ。ダイナピンクは、ゆっくりと立ち上がった。
怒りに燃えるレイの瞳。彼女の目には、サメシンカしか映らない。ローズサーベルを携え、最後の力を振り絞って高々とジャンプ。
サメシンカの右腕の鋭いノコギリが、彼女を待ち構える。飛び込んできたダイナピンクの左肩に、ノコギリがズブリとえぐり込まれた。
だが、ダイナピンクの渾身の力をこめた『PHBS(ピンクハートブレイクショット)』は、サメシンカの左胸、心臓を貫通していた。
「ヌヌヌヌヌヌ、ヌグワアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
ローズサーベルを刺しこまれたままヨロヨロと後退するサメシンカ。
「おおおおお、おのれダイナピンクめぇぇぇぇ!殺してやる、殺してやるぞぉぉぉぉぉぉぉ!!」
サメシンカがビッグバン・プログレスにより巨大化する。超進化獣となったサメシンカが吼える。
「ギュフオオオオオ!ダイナピンク、ペシャンコにしてやるぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」
ダイナピンクはもう動けない。ジャシンカの怨霊による呪いによって、すでに心は死んでいた。地球を、動物達を思う気持ちが最後の力を与え、
なんとか身体を動かしてきたが、とうとう限界が訪れた。仁王立ちのダイナピンクに、サメシンカの足がグングンと迫る。
―4―
M78星雲の光の国の戦士ユリアンは、姿を消したままずっとレイを見守っていた。光の国の掟さえなければ、すぐにでもレイに力を貸していただろう。
レイとサメシンカの闘いは、滅亡させられた者達の怨念が巻き起こした復讐劇であり、ユリアンは干渉できる立場にはない。
しかし、もはや我慢は出来ない。美しい地球と、そこに住む動物達を愛する、美しい心を持った女戦士が今、生命の危機に陥っている。
ユリアンは、エイティとの約束、光の国の掟を破る決意をし、実体化を始める。光が集束し、女戦士ユリアンへと変貌していく。
出現するや、巨大サメシンカに組み付き、投げ飛ばすユリアン。そして傷ついたレイを安全な場所に移動させ、巨大サメシンカに対峙する。
「な・・・何者だ貴様ァ!?」
あっけに取られるサメシンカ。だが、歯向かう者であれば容赦はしない。グルルとひと吼えし、身構えるサメシンカ。
組み合う両者。パンチ、キックを叩き込むユリアン。だが、ジャシンカ帝国唯一の生き残りであり、全ジャシンカ帝国の民の怨念を一身に背負う
超進化獣サメシンカは強い。ユリアンの攻撃を苦も無く受け流した。
サメシンカの右腕が、ソーシャークの如く、左腕がハンマーヘッドシャークの如く、変貌していく。右手を振るうサメシンカ。
「ヴアアアアアア!」
胸を切りつけられ、傷口を抑えてうずくまる。さらに左腕のハンマーがユリアンの頭部に叩きつけられ、ひざまずくユリアン。
そしてサメシンカは、横たわるダイナピンクの方へノシノシと歩いていく。あくまで狙いは復讐である。
必死に立ち上がったユリアンはジャンプし、サメシンカの前方へ舞い降りる。どんな事があっても、彼女を守ってみせると決意したユリアンが、
サメシンカにガバっと組み付いた。鬱陶しいユリアンを、サメシンカはハンマーで徹底的に殴りつける。身体の至る箇所が陥没するユリアン。
さらにサメシンカは、右腕のノコギリをユリアンの脇腹に押付け、グイっと引いた。
「ヴェアアアアアアア!フゥ、ウアアアアアアア!!」
脇腹にギリギリとノコギリがえぐり込む。そしてサメシンカはハンマーを大きく振りかぶり、ユリアンの顔面にそれを叩きつけた。
「ヴェガハァァァッッッ!!!」
バリンッッ!という衝撃音が鳴り響く。ユリアンの、水晶の如く光り輝く瞳が叩き割られてしまった。視力を失った瞳を抑え、悶絶するユリアン。
サメシンカがズバッ!ズバッッ!とノコギリを振り回す。皮膚を切り裂かれつつ、フラフラと死の舞を踊るユリアン。
銀色の皮膚につけられた傷口からユリアンの筋の肉が露出されはじめ、絶叫が響く。
さしものユリアンも力が入らなくなり、サメシンカに吹っ飛ばされた。あれほどのダメージを与えたのだから、もう立ち上がって来ないだろうと
サメシンカが考えたのは無理も無い。ところがユリアンはなおも立ち上がり、サメシンカに飛びつかんとする。
寸前で気配を察したサメシンカがユリアンにノコギリを突き入れた。
「ヴェア!・・・・ヴゥ・・・ゥ、ウウウゥ・・・・。」
ユリアンの腹を、ノコギリがザクリと貫通している。サメシンカは一旦それを引き抜き、ユリアンを上空へ投げ上げる。
落下地点で待ち構え、ズブブっとノコギリを突き刺すサメシンカ。ユリアンの身体から滴り落ちる体液を浴び、
やがてユリアンを大地に叩き落すサメシンカ。ユリアンはピクピクと痙攣しながら、なおもサメシンカへの対抗心を燃やしつづけている。
異常なまでの執念をもって、ダイナピンクを守ろうとする光の巨人。サメシンカは小癪なユリアンの始末を優先させる。彼女の身体を抱き起こし、
右腕のノコギリをユリアンの股の間に差し込む。股先にピッタリと刃をあてがうと、力任せに引っ張った。
「ヴェアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
大絶叫するユリアン。今度は、勢いよく押してみる。サメシンカのノコギリは、少しずつユリアンの股間にめり込んでいった。
「ヴェアア!フ、フヌゥゥゥア!ヴゥ、グゥゥア!シュフゥゥアアアアア!ムヴゥゥアアアアアアアッッッッ!!!」
サメシンカは、このままユリアンを左右に切断しようという腹積もりである。ブチブチッと音を立てながらユリアンの股間に侵入していくサメシンカのノコギリ。
敏感な部分への痛みと、性器が傷つけられていくという精神的苦痛に悶えるユリアン。一旦恥骨のあたりでつっかかるも、
サメシンカはユリアン切断をあきらめず、怪力を発揮してさらにノコギリを引く。このままでは、切断される前にショック死する恐れもあった。
その時、サメシンカに対してレーザーがぶち込まれた。たじろぐサメシンカ。それは、ダイナロボの頭部を構成する、ダイナマッハから放たれた
マッハレーザーであった。
「やはり進化獣が復活していたのか!」
先行してやって来たダイナマッハを駆るダイナレッドが叫ぶ。ダイナマッハのレーダーが、ダイナピンクの存在をキャッチした。
ダイナレッドはその場所へ緊急着陸する。そしてそこに、ズタボロになって横たわるダイナピンクの姿を発見した。
ヘルメットからレイの顔が曝け出され、ダイナスーツもあちこちが裂かれている。颯爽とした女戦士の面影は微塵も無い、無様な醜態であった。
「レ、レイッ!レイィィィ!!」
ダイナピンクを抱きかかえ、必死で彼女の身体を揺するダイナレッド。レイはゆっくりと目を開け始める。そしてパクパクと口を動かし始めた。
「ア・・・アゥア・・・ウ、ウゥ・・・ゥゥ・・・。」
「レ、レイ、しっかりしろ!レイ!」
何かを言っているような風ではあるが、彼女の言っている事はまるでわからない。目も焦点が合っておらず、うつろである。
―5―
「ダイナレッドめ・・・。ピンク共々、まとめて葬ってやるわぁ!」
サメシンカは2人を踏み潰さんと、歩み寄ろうとする。その足を、這いつくばりながら近づいてきたユリアンがひっしと掴む。
ユリアンをガシガシと踏みつけ、手を放させようとするサメシンカ。業を煮やし、ノコギリを高々と振り上げたところに、今度は大型ミサイルが飛んでくる。
戦闘母艦ダイジュピターが雲を割って出現した。再度撃ち放たれたジュピターミサイルを喰らい、吹っ飛ぶサメシンカ。
「みんな発進急げ!進化獣を倒すぞ!」
「ダイナレッド!ダイナピンクの反応があるぞ!彼女はそこにいるのか!?」
「ああ、いる。だが・・・彼女はもう・・・。」
ゴーグルの中に溢れる、ダイナレッド=弾北斗の涙。やがてダイナレッドは、ダイナマッハに飛び乗る。ダイジュピターから発進した
ダイナモビル、ダイナギャリーに乗る仲間に向かって叫んだ。
「行くぞ!合体だ!」
集結する3体のマシン。ダイナロボが完成した。
「一気にケリをつけるぞ!科学剣ッッッッ!!」
ダイナメタル合金製の剣を振りかざすダイナロボ。ダイナスーパージャンプで、天高く上昇する。
「科学剣!稲妻重力落とし!!」
四人の男が叫ぶ。科学剣に稲妻が寄り集まる。光り輝く剣を構え、自由落下を開始するダイナロボ。
「俺様は負けん!ただ1人生き残った俺様には、全ジャシンカの者達の怨念が取り憑いているのだ!
皆、力を貸してくれ!皆を葬ってきたあの技をはじき返す力を、俺にくれぇぇぇぇぇぇ!!」
妖しく輝くサメシンカ。怨念の集合体となったサメシンカに叩き込まれた科学剣が、バキンと割れた。幾多の進化獣を葬ってきた必殺技が敗れ去った。
「な・・・なんて事だ・・・。稲妻重力落としが破られるなんて・・・。」
「や、やはりダメだったか・・・。5人の力がそろわなくては、ダメなのか・・・。」
「ク、クソォ!どうする!?もう打つ手はないぞ!」
たじろぐダイナマン達を、レッドが諭す。
「まだ、最後の手段が残っている・・・。このダイナロボを、ヤツにぶつけるんだ!」
「な、なんだって!?」
「それしかヤツを倒す方法は無い!」
「む、無理だ!ヤツは置物じゃないんだ!黙って特攻を受けたりはしないぞ!」
「む・・・アレを見ろ!」
ヨロヨロと立ち上がったユリアンが、サメシンカに組み付いた。ダイナマン達の決意を感じ取ったユリアンもまた最後の力を振りしぼった。
「光の巨人も手を貸してくれる!よし、行くぞ!ダイナロボをやつにブチ当てる!みんな、命中する直前に脱出するんだ!」
「ようし、ダイナロボ版のスーパーダイナマイトだ!」
身動きの取れないサメシンカに向かい、突進を始めるダイナロボ。
「自爆装置作動開始!喰らえ、最後の大爆発!スーパー、ダイナマイト!!」
「スーパーダイナマイトッッッッ!!」
叫ぶダイナマン。そして4人は、命中直前に愛機から飛び出した。
「うおおおおお、おのれええええ!ダイナマンめええええええ!!!」
巻き起こる、空前の大爆発。爆炎に消える、サメシンカ。ジャシンカ帝国の、真の壊滅の時が来た。
爆風が晴れると、粉々になったサメシンカの破片だけが残されていた。光の国の巨人の姿は、そこには無かった。
沈む夕陽を見つめる4人の戦士たち。その中央には、所在無げにたたずみ、呆然と虚空を見つめるレイの姿があった。
「俺たちの闘いは、終った・・・。」
弾北斗、星川竜、島洋介、南郷耕作は、夢野博士にダイナブレスを返却し、それぞれの夢を追い旅立つ。
そして立花レイは、夢野博士に養われる事になった。大好きな犬や鳥達と一緒に暮らしていく一生が始まった。
ヒトの言葉を話す事が出来なくなったレイだが、動物達との意思の疎通が出来るようになったためか、
彼女はいつも楽しげな笑みを浮かべていた。夢野博士は、それは彼女にとって唯一の救いであると思うほか無かった。
―EPILOGUE―
ユリアンは今、彼女を間一髪救った同郷の志の懐に抱かれていた。彼の治癒光線によって、傷は完全に癒えている。
静かに瞳の輝きを取り戻していくユリアン。
「ようやく、目が覚めたか・・・。」
「エ、エイティ・・・。あなたが、助けてくれたの・・・?」
「やんちゃなお姫様のお守り役は大変だ・・・。それにしても、約束を破るばかりでなく、あんな危険な目に遭うなんて・・・。」
「でもエイティ、私は後悔していないわ・・・。あの時彼女の命を助けなければ、私は一生後悔していたはず・・・。」
「・・・なんにしても、掟を破ってしまったのだから、罰は受けてもらわないとな・・・。たとえ君が王女であっても・・・。」
「覚悟はしているわ・・・。私、どんな罰も受けるつもりよ・・・。」
「しばらくは、ウルトラの国へは戻れませんね・・・。辺境の地の防衛でもしていただきますか。太陽系の第3惑星の防衛、なんてどうだろう?」
「え!?そ、それじゃ・・・。」
「一年間、立派に闘った5人の戦士たち。彼らは充分に頑張った。もう、次の夢を追わせてもいいだろう。でもこの星にはまだ危険が満ちている。
何とか君の手で、守ってあげて欲しい。」
「エ、エイティ・・・。」
「警備隊へは僕から伝えておく。では、頑張ってくれ、ユリアン。」
「私・・・。この美しい星を守って見せるわ・・・。エイティ、ありがとう・・・。」
2つの光は、別々の方角へ消えていった。地球へ向かった光は、あらたに地球の防衛の任務を受けた、女戦士ユリアン。
今後彼女は、地球上では仮の姿を装い、地球に滞在することになる。その容姿のモデルは、すでに決まっている。
だれよりも、この美しい星を愛し、この星にすむ全ての生命を守るために勇敢に闘った、立花レイの姿だ。
そして、この星が永遠に光り輝く事を願い、名は星涼子とした。
―fin―
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